「中小企業のDX成功事例を、自社と近い業種で見たい」——東京支店でDXのご相談をいただくたび、最初に求められる情報のひとつです。結論からお伝えすると、中小企業のDX成功事例には3つの共通点があり、それを自社向けに「翻訳」できるかが成果を分けます。この記事では、創業1939年・全国で約87年の歴史を持つ理研産業が実際に支援してきた10事例を業種別にご紹介します。製造業から農業協同組合、福祉施設まで、規模も業界も異なる中小企業のDXのリアルをお届けします。
業種が違っても、成果を出している中小企業には共通する3つのパターンがあります。
成功事例に共通するのは、最初から全社最適を狙わずに小さく始めている点です。1部署の1業務でしっかり成果を出してから、横展開する順序を踏んでいます。これは投資負担を抑えるだけでなく、社内に「DXは成果が出る」という成功体験を作る意味でも有効です。
事例を伺うと、経営者が「なぜDXをやるのか」を自分の言葉で語れる企業ほど定着率が高い傾向にあります。ツール導入が目的ではなく、ありたい姿の実現が目的と整理されていることが、現場の協力を引き出します。
情シスが不在または兼任の中小企業では、ツール選定・導入・運用・保守までを自社だけで回すのは負担が大きすぎます。成功事例の多くは、信頼できる外部パートナーと役割分担を明確にしたうえで進めています。実際、弊社にいただくご相談の上位には「Microsoft各種ライセンスの見直し」「業務DX全般のご相談」が常に入っており、外部の目を借りる重要性が伺えます。
業務領域の選び方を整理したい方は、成果が出やすい業務領域TOP5の記事もあわせてご覧ください。
ここからは理研産業が実際に支援してきた10事例を業種別にご紹介します。
取り組み:応接室リニューアル&Web会議ブース導入
東京支店がご支援したサンポール様の事例では、応接室を刷新するとともにWeb会議専用のブースを新設しました。来客対応の場と、オンライン商談の場を同じフロアに併存させることで、商談・打ち合わせをオンラインとオフラインで自由に切り替えられる空間を実現。製造業の中小企業でも、来客対応のあり方とコミュニケーション基盤を見直すことで、顧客接点の質と業務効率を同時に高められることを示す事例です。「応接室の更新は単なる内装工事ではなく、商談スタイルの再設計である」という発想が、ハイブリッド時代のDXの好例になっています。
取り組み:請求受領業務のスマート化&電帳法対応
煩雑な請求受領業務を電子化し、2024年1月から義務化された電子帳簿保存法にも対応された事例です。経理部門の月次クローズ業務が大幅に効率化され、書類を探す時間がほぼゼロになりました。電帳法対応は「やらなければならない」課題ですが、同時にDXの好機にもなることを示す事例です。
取り組み:RPAから生成AIへの進化
もともとRPA(Robotic Process Automation)で業務自動化を進められていたフーズアイ様が、さらに生成AIを取り入れ、働き方の質を高めた事例です。単純作業の自動化から、判断を伴う業務支援へと範囲を広げています。「ツール導入は1回で終わらず、進化させ続けるもの」という姿勢が成功の鍵になりました。
取り組み:地域に人が集まるコミュニティハブとしてのオフィス
職員間のコミュニケーション活性化と、地域の方々が気軽に立ち寄れる「拠り所」としての支店づくりを目指したリニューアル。単なる窓口業務の効率化ではなく、地域に根差した金融機関ならではの空間デザインを実現しました。
取り組み:「集うオフィス」のコンセプト実装
製造業の中でも比較的小規模な鉄工所が、社員が自然に集まり対話が生まれるオフィスを実現された事例。製造現場とオフィスの距離を縮めるレイアウト設計が、社員同士のコミュニケーションを変える起点になりました。
取り組み:地域の人が気軽に訪れて相談できるオフィス
不動産業の「敷居が高い」イメージを払拭するため、地域の方々が立ち寄りやすい開かれた空間を実現。来店動機を高めるオフィスデザインが、顧客接点の質と量の向上につながりました。
取り組み:講義室の多目的化
「学び方も多様性」をテーマに、講義室を自由に変化させて多様な授業形態に対応できる空間設計を実現。可動什器とICT機器の組み合わせで、講義・グループワーク・発表会など、用途に応じた使い分けが可能になりました。
取り組み:ロボット活用による分業体制
「人とロボット、得意分野を分担する」というコンセプトのもと、塗装作業の自動化と人の判断業務を切り分けました。製造業に近い性質を持つ塗装業でも、DX的なアプローチが効くことを示した事例です。
取り組み:初めての講習会オンライン配信のサポート
コロナ禍を契機に、従来は対面のみだった講習会をオンライン配信に対応された事例。機材選定から配信オペレーションまで一気通貫でサポートし、地理的制約を超えた学びの場を実現しました。
取り組み:ICT機器による見守り強化
「ICT機器で欲しい所に目が届き、より手厚い見守りを」というコンセプトで、介護現場のリアルな課題に即したICT導入を実現。職員の負担軽減と入居者の安全確保を両立した、福祉領域ならではのDX事例です。
その他の事例はお客様事例一覧からご確認いただけます。
成功事例の裏には、同じ轍を踏んでつまずく事例も多くあります。ご相談の中で見えてきた、成功事例に共通しなかった3つの落とし穴を共有します。
逆に言えば、この3つを避けるだけで成功確率は大きく上がります。
事例を「真似」するのではなく、自社向けに「翻訳」して再現するためのステップを4つご紹介します。
事例の表面だけをなぞると、ツールの違いや現場の温度差で頓挫します。「なぜこの企業はこの取り組みで成果が出たのか」という背景を理解することが翻訳のコツです。理研産業のICTコンサルティングでも、事例の翻訳支援を行っています。
この記事のポイントを整理します。
DX推進の進め方の詳細は中小企業のDX推進ガイド|5ステップで解説もあわせてご覧ください。
業務のDX化でお悩みの方は、理研産業 東京支店にお気軽にご相談ください。現状の課題を整理するところからお手伝いします。
はい、参考になります。業種よりも**「業務の性質」「組織規模」「目的」**のいずれかが近い事例を探す方が役立ちます。たとえば、製造業のサンポール様の事例は「来客対応とコミュニケーション基盤の見直し」という観点で、製造業以外のサービス業や士業にも応用可能です。
業種・規模・抱えている課題の3軸でマッピングしてみてください。どれも当てはまる事例がなくても、「課題が近い」事例を優先するのがおすすめです。判断に迷う場合は、第三者の壁打ちが有効です。
公的な事例集としては、経済産業省の「DXセレクション」が代表的です。経済産業省が毎年、模範的な中小企業のDXを選定して公開しています。業種の幅広さと信頼性の高さで、自社に近い事例を探すのに有用です。
最初の一歩は事例の真似ではなく、現状の業務課題を書き出すことから始めるのがおすすめです。書き出した課題と事例を照らし合わせれば、「自社で取り組むべき領域」が自然に見えてきます。